国際資産税(海外資産・国際相続)に関する案件が難解な理由
Reason
税理士業界においても、まだまだ未成熟な分野であり、
国税当局においても、案件単位でその都度判断しているほど
当分野は難解です。
では一体どうしてそこまで難解なのでしょうか。
国際資産税対策が難解な理由
そもそも相続税専門の税理士でさえも少数派という事実
国内における相続税でさえ、専門性を有する税理士は少数です。
さらに、国際相続による相続税や海外資産に関する税務については、要求される知識が追加され、国内にはない概念や法律関係を考慮しなければならない場面があり、極めて個別的かつ特殊性が高く、実務的にもセオリーが確立されていません。
税務業界においても、知識やノウハウがほとんど蓄積されていない中、税理士は手探りで、この分野を習得しなければならないという困難さがあります。
国際資産税の案件は、税務調査が積極的に行われます。
調査立会いの経験だけでなく、税務訴訟までを
見越し、調査官を論破するだけの実力が要求されます。
国税当局は、申告があった案件などに対し、その組織力を生かして様々なセクションが税務調査に関わり、綿密に検討を重ねて、何かと問題点を見つけて課税に結び付けようと思考します。
国税当局は、国際資産税の案件において、難解であるが故に突っ込みどころが多いことを知悉しており、その調査には場数を踏んだ専担のセクションを派遣します。
一方、対峙するのが国際資産税に不慣れな税理士となると、調査を受ければ最後、理由も分からず調査官の指摘に対する反論の余地もなく、修正申告による追徴課税を免れないという事態に陥ってしまうことが多々あります。
そうならないためにも、指摘される点を予め見抜いた上でいかに理論武装し、訴訟で争うレベルの戦略まで想定して、調査官に対峙しなければなりません。
また、調査官を論破するには、知識だけではなく、論理的かつ合理的に説明する力も要求されます。
多岐にわたる知識だけでなく、外国法令のリサーチ力、法的思考力が必要
税理士としての高度な能力だけではなく、
国際法にも明るく、外国法令にも対応しなければなりません。
国際資産税を難しくする理由には、もう一つ背景があります。
それは、「国際」と称されるとおり、資産の所在や相続関係が国内に留まらないということです。
通常の国内案件であれば、国内の法令に通じていれば事足りるのですが(もちろんそれだけでも大変なことですが)、上記のような国際案件となると、権利関係や法律関係が外国法令を前提とすることがあり、それに対して、税法をどのように当てはめたらいいのか、分からなくなってしまうのです。
外国法令をリサーチすることも大きな壁となりますが、そこに行き当たったとしても解読かつ法的に理解するのは、さらに大きな壁となります。場合によっては、外国の裁判例を紐解く必要も出てきます。
現在ではインターネット上に情報が氾濫しており、いわゆるネット情報のみに頼って、法的な裏付けが得られないまま実務を進めてしまうことが多く、私の経験上、受注件数をアピールする大規模な税理士法人にその傾向が見られます。
根拠法令をきちんと確認しないのは、思い込みで実務に当たっているのと等しいことで、本当に危険なことであると認識すべきです。
特に、国際資産税の実務は、予測がつかない外国法令が関わるため、その根拠法令の確認を怠ると、課税関係が根底から覆るリスクが高くなります。
「税法以外に要求される
知識と経験のレベルが高すぎる」
という特徴が更に難解なものにしています。
加えて、国際資産税の案件において、合理的な結論を出すためには、税法に規定する各条文の趣旨等を熟知し、様々な外国法令が基礎となっている権利及び法律関係をいかに当てはめて思考するか、豊富な知識やセンスだけでなく、柔軟なリーガルマインドを持ち合わせていなければなりません。
つまり、これらのことは、税理士としての通常業務では到底身に付くはずもなく、知識として入れておく面とそれを体現する実務経験、日々継続して思考し続けることによって得られるもので、要求されることが多岐にわたる上、その一つひとつがハイレベルであることから、税理士業界において、誰でも参入できる分野ではないのです。
まさに、国際資産税は、「税理士を選ぶ分野」なのです。